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術後の飲水制限についての話

世間話
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添付写真は、入院生活でおなじみ『吸い飲み』です。サイズ感が分かりやすいかなと思って手のひらに乗せてみました。25年前はもっと大きく感じたのにな。
ベッドに寝たままの状態でも飲み物が飲める便利グッズです。
今回は、これをとっても使うことになる、術後の飲水制限について書こうと思います。


心臓の手術を受けた後、皆さんが経験するのが飲水制限です。
読んで字のごとく、飲水する量を制限されてしまいます。この制限は、赤ちゃんだろうがお年寄りだろうが、必ずあります。
辛い。
本当に辛い。さすがに1歳の時の記憶はないけど、5歳の時のはまだ覚えてる。辛かった。どんなに喉が渇いても、決められた分量以上のお水飲めないんです。
看護師さん達も辛いって言ってた。ICUにいる心臓の手術後の患者さんは砂漠で遭難した人みたいにみんな「みず~…みず~…」と唸っていて、私たちだってお水飲ませてあげたいけどそういうわけにもいかないんだ、と後から話してくれました。傍にいる家族も辛いですよね。

ご飯が食べられなくても水さえあれば人間は2週間程度なら死なない。なんて話も聞いたことあるくらい、水って人間にとって必要なものなんじゃないの?喉が渇くってことは飲んだ方が良いんじゃないの?血液ドロドロになっちゃわない?と、思っていましたが

そもそもなんで水を飲んじゃいけないのか。
心臓を休ませる為です。
水を飲むことで、胃とか腸とかに影響するのは何となくわかるけど、心臓関係あるの?
あるの。

手術中は人工心肺を使うので、心臓が仮死状態になっています。
心臓の手術なんてしたことない!なんて方は「心臓が仮死状態?!それって大丈夫⁉」と思うかもしれませんが、大丈夫です。私は医学的な専門家ではありませんので、人工心肺の仕組みについてはネットなんかで検索していただく方がいいと思うんですが(検索した結果、全然大丈夫そうじゃないと思うこともありますが)、一応10数時間以上人工心肺に繋がれる手術を3度経験した人間が、今こうして楽しく暮らしてますのでね、心臓を仮死状態にしても大丈夫なんです。

さて、大丈夫とは言いましたが、人工心肺を長時間使用することは、当然心臓にとって大きなストレスになります。血液の循環を止めないとはいえ生理的な循環とは異なる(体外循環による血液循環は、通常の循環に比べて拍動が少ない)ため、心臓だけでなく脳や体内のその他の臓器にも負担がかかっている状態です。
だから、手術が無事に成功したからすぐに元気になるわけではなく、術後の心臓は一時的に心不全の状態になっており、他の臓器も機能が低下しています。体がびっくりしないように、それぞれの臓器を少しずつ動かしていく必要があります。

心不全とは心臓の働きが低下している状態です。体内の水分量が過剰に増加すると、血液量が増えることになり、結果として心臓に更に負担がかかってしまいます。心不全患者さんの中には水分制限が必要な方がいますが、全ての人ではありません。水分制限が必要な場合とは、腎機能が悪い場合、重症の心不全の場合、心不全の管理が難しい場合がほとんどです。心不全が軽度であったり、管理が十分にできている場合は、水分制限は必須ではありません。また、水分制限は心不全の重症度や年齢、体格などで異なるため、一概に全員同じ量に制限すればいいものでもありませんし、夏と冬など、汗のかき具合でも異なります。ご自身に水分制限が必要かどうかは、気軽に医療スタッフにお尋ねください。

http://www.jacr.jp/web/faq/q177/

こういった理由から、術後は心臓(とその他の臓器)を守るため、摂取する水分の量を制限されてしまうわけです。
それで、だんだんと元の体のようになってきたら制限が無くなっていく場合もあれば、慢性的に心不全症状が残る際には術後も水分の制限が残る場合もあります。私はたぶん後者かな。まだ術後半年なので、経過を見ているところですが。

ダイエットでも何でも、とにかくお水を沢山飲みましょう!という流れが定着しているから 、水分は取らなければいけないもの。飲めば飲むほど代謝が上がる。みたいなイメージが強くて、なかなか肩身の狭さを感じるというか
「心臓が弱いから飲水制限がある」と話すとほぼ100%「なんで?」と言われるし、年齢が上がると後天的な病気で心臓の手術を受ける人も増えますが「私は(退院後は)そんな制限ないよ」 と言われてしまったりします。そんなときは、こういった理由を簡単に教えてあげて、あなたとはそもそも体の作りが違うのだという気持ちで、自分の心臓のためにびしっと制限守っていきましょう。



さて、私の術後の話になりますが、人工呼吸器が挿管されてる間は「喉が渇く」という感覚は無かったです。たぶん鎮静剤も効いているし色々点滴も入ってるしで、空腹感も無かった。ただ、ICUは乾燥しているうえに、挿管のせいで口が閉じられないので唇は渇き続けます。かっさかさ。術前にリップクリームを預けていて(私は肌が弱いので特定のものしか使えないのです)目を覚ます前から看護師さんが塗って保護してくれていましたが、「あれ、食べた?」と思うくらい減りが早く、それでもなお唇が乾燥して脱皮したくらい皮が剥けました。
呼吸器抜管後、嚥下のリハビリが終わって口からの飲水が可能になると、だいたい1日300㎖(までしか水分摂取できない)から飲水制限が始まります。この嚥下のリハビリ終了後、脳が(体が)スイッチを押されたみたいに「喉が渇いた」という感覚を思い出します。300㎖なんて全く足りない。一息に飲みたい。


術後はが出ます。心臓はまだ炎症反応が出ているし、胸骨もくっついてなくて(骨折と同じような状態)、様々な薬を投与しているせいでもあります。
私は、直後に39℃(眠っていて意識なし)、翌日からは38℃~37℃をうろうろしていました。
とにかく暑くて仕方がなくて、汗もかくし口も乾くし、300㎖なんて何かの冗談でしょと思うくらい少ない。眠ってしまってリセットして、早く明日の分の水分が欲しいけど、喉が渇いて眠ることも出来ない。
そこで気を紛らわせるために行うのは、うがいです。ほぼ寝たきりなので水を含んで吐き出すだけ。そのまま飲み込んでしまいたいんだけど、そんなことして体内が対応できずに状態が悪化するのは嫌なので、ぐっとこらえて吐き出します。うそ。ほんとは我慢できなくてこっそり何回か飲み込んだことある。飲んだら死ぬぞって言われても飲んでただろうと思うくらい極限。でも監視カメラもあるし、計量目盛りのついたカップから目盛りのついた洗面器に水を吐き出さないといけないから、あんまり飲んだらたぶんバレるなって思ってほんとに舐める程度。(良い子は真似しちゃダメだよ)97%くらいは、きちんと吐き出しました。
それから、。同じ量でも、氷になると口内で溶けるまでの時間が稼げるし(口内も熱を持っているから、それでもあっという間に溶けてしまうけど)、冷たさはたまらなく爽快でした。私は面会時に毎日コンビニのクラッシュアイスを買ってきてもらっていました。(保存するためICUの冷凍庫のスペースは借りられた) 一口サイズでとても扱いやすい。氷の場合は重さでどれくらい摂取したかを計っていました。
それ以外には、湿らせたガーゼみたいなのを口に当ててもらいました。これはうがいもできないくらいの状態の時。(急変した時)まだうがいできない赤ちゃんとかもこれするみたいですね。
もう中毒。水飲みたい。氷食べたい。頭の中はそれだけ。何度か夢の中でレモンサワー飲んでしまって「やばい!水分制限してるのに!ていうか酒やし!!」と思って飛び起きたことがありました。実際には飛び起きられないんですけどね。点滴だらけで。

血液検査の数値やら、24時間の尿量などから判断して、飲水量が決まります。朝の回診で「今日の飲水量は何㎖で」と言われていたので、毎朝が合格発表のような緊張感。何も言われない日は「昨日と同量」という意味でした。
1日1000㎖まで許可された時はめちゃくちゃ嬉しかった。


あの時の喉の渇き方は異様だったなと思います。
一般病棟に移っても下がってからは、活動量が増えたにも関わらず、1日1000㎖が全然苦じゃなくなって、なんなら慎重に飲みすぎて余るようになりました。
今も一応飲水は1日1500㎖までという制限がありますが、ICUに居た頃のような喉の渇きは感じないので、この量でも足りないと感じることはほぼありません。食事でも、辛い物や味の濃いものは避けるようにしているので、そのせいもあると思いますが、むしろ、絶飲時期にうっかり水を飲んでしまった夢を見て飛び起きたときの感覚のまま飲むことが(飲むことと浮腫むこと)怖くなってしまって時折軽度の脱水になるので、意識的に飲むようにしています。



ちなみに飲水量というのは、食事に含まれる水分を含まないので、お味噌汁やスープなどを飲んでも飲水量には換算しません。(含有塩分量の方を気にしたほうが良い)
それならば、かき氷は食事だろうか。溶けてしまってから水分換算だろうか。

なんてことを考えてみたけど、氷が飲水扱いなんだからかき氷も飲水か。

かき氷の美味しい季節がやってきますね。
暑さと心臓についての話も別の記事で書いています。
皆様も脱水や熱中症には気を付けてくださいね。


おしまい。

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