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☆退院まで(リハビリと最後の抜管)

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急変のときはどうなるかと思ったけどね、よく頑張ってくれた。心臓がもう安心だという状態になってからの伸び率(回復力って意味かな)がすごくてね。これは間違いなく若さだね。」

2回目のICUを出てからは、先生達もびっくりするくらい順調に数値が良くなっていきました。

入院中は毎朝心外(心臓血管外科)の回診があるんですが、沢山の患者さんが居るから時間も無いし、必要以上に不安を与えないためにもあまり詳しいデータは教えてもらえないけど、必要最低限の会話でも、顔付きや纏っている空気で自分の状態が分かってきます。
例えば「大丈夫ですよ」の一言でも、初めに一般病棟に上がったときは
昨日より悪くなってないから大丈夫
この数値はまだ許容範囲だから大丈夫
だったのが、今回は
昨日より改善されてるから大丈夫
このペースでいけばもう大丈夫
のニュアンスになっていました。
先生達の表情が穏やかであればこちらの緊張もほぐれるし、ちゃんと元に戻ってきてるという自信にもなりました。


「心臓のことは専門の医師が管理してる!それが仕事だから!えふさんは心配せず、リハビリを頑張ってくれたらいいの!」
という執刀医の言葉通り、食事睡眠、そして毎日のリハビリで体力を付けること、が退院に向けての私が今やるべきことです。



術後のリハビリに際して、廃用症候群という診断名が付きました。

廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のことをいいます。

https://www.irs.jp/article/?p=483

すごく雑にまとめると、ずっと寝てたから身体が今までやってたことを忘れてる。みたいなこと。
(※正確に知りたい方はリンク先見てね)

リハビリには専属の先生(作業療法士)がついてくれます。
ICUでの記事にも書いたように、寝たきりの状態が長く何も出来なくなっていた私は、まずは立ち上がることから。
そのあと歩行器を使って歩く練習をします。
病院のパジャマで、点滴をいくつも引き連れて歩行器にしがみ付いているときは、先が全然見えなくて、正直ほんとに元の生活に戻れるんだろうかと思っていました。
いっぱい増えた傷跡と痣がまだ生々しくて、そいつらがちゃんと治るかも分からない。さらに加えて、同時期に手術を受けた人だけでなく後から手術した人にもどんどん追い越されていく。歩く速度も、体に繋がっている点滴の量も。比べるものじゃないと分かっていても焦りしかなくて、悔しくてたまらなかったです。
悔しさは、時々親に八つ当たり、あとは身体を動かすしかなかった。開胸してしまっているんだから、もう後には引き返せない。

何の支えもなく歩けるようになったら、次はリハビリ室でバランスボール的なものに乗ってみたり、階段を上り下りしたり、ペダルを漕いでみたり、正座からおしりを床につけずに立ち上がるとか背もたれの無い椅子から立ち上がるとか、様々な日常生活で起こり得る動作をやってみて、必要な筋肉がちゃんと動かせるか、反応できているかを先生と雑談しながら少しずつ熟していきます。
雑談もとても重要で、どのくらいのペースで動けるか、に加えて、会話をしながら動けるか、というのも心臓がちゃんと働いているかを見るポイントになります。

最初は、とにかく何をしてもすぐ息が切れる
データ上では心臓が正常に動いていても、筋力不足で息が切れるんですって。
確かに言われてみたら胸がバクバクしてないのに息が切れてる。不思議な感覚。

持ち前の負けず嫌いを遺憾なく発揮し『手術したら息切れがマシになるって聞いたのに!悔しい!』と、ぶつくさ文句を言う私にも笑顔で付き合ってくれた先生のおかげで
時間はかかってしまったけどリハビリは満点で終了しました。


術後の心臓の炎症を抑えるための抗生剤の点滴が1日3回。数値が良くなるにつれてそれが少しづつ減っていき、年末には最後の点滴が外れました。
そして年が明けて、最後のスペシャルイベントがやってまいります…

実は私のお腹(おへその上辺り)からはまだ、2本飛び出しています。(ガーゼか何か貼って、剥き出しにはしませんが)
この管は何に繋がっているかというと、心臓です。こわ。
これは、体外式ペースメーカーのリードです。必要な時にそのリードと本体を繋いで使用するんですけど、術後しばらくして安定してきたら、本体は取り外します。重いし。そして体内にリードだけが残されます。お腹の部分はもちろん何かあるなぁという感じはしますが、体内に入っているという異物感や痛みは一切ありません


退院が決まったらやっとこれを抜くことになります。
読んで字のごとく、抜くんです。すーっと引き抜くらしい。

あり得ない。もう一回言う。あり得ない。
心臓まで達している管状のものを、麻酔もなしで、お腹から、引き抜く。は?
やっぱりもう一回言います。あり得ない。

これは、心臓の開胸手術を受けた人はほとんど経験しているはずです。先天性だろうが後天性だろうが。もちろん5歳の私だって経験しました。十分理解していますよ、あり得ないことではないと。
先生達も、看護師さん達も、口を揃えて「そんなに痛くないですよ」と言うんです。
ちょっと待ってこれだけは声を大にして言いたい。
先生達は、されたことないでしょ!と。
抜かなきゃいけないのは分かるけど、痛くないよって言われながらするのは心外だ。痛みを伴う行為だということを理解したうえで処置していただきたい。そこを何とかお願いしますよ。
「でもえふさん、もっと痛い治療も受けてますから、耐えられると思います。自信持って。」
それ言われたらおしまい。

安定剤を処方してもらって、深呼吸して心を鎮める。(ちなみに上手くいけばうとうとしてくるんですが、私は大抵バッキバキに醒めています)


「さあ!抜きましょうか!」

先生達曰く、するーーっと抜いて終わり
ですが、体感としては
ぐっ、ぐっぐっ、プチン!ぐーっ、ぐっ、プチン!プチン!
みたいな感じでした。プチン?

痛かったですよ。しっかり痛かった。
抜いた後は30分くらい起き上がったり寝返りをうったりすることが禁止されます。
安静解除と共に昼食が運ばれてきて、そんなすぐに食事なんて…と思ったくせに、おかずの麻婆豆腐が美味しくてあっさり完食してしまいました。

その夜は久しぶりに本当に何も繋がってない身体で眠り、翌日、晴れて退院となりました。

入院するために病院に行くときはまだ秋の終わりだったのに、外に出ると完全に冬になっていました。
温度管理されていた病室と違って、寒さがまた病院の外だっていう感じがして嬉しかった。
歩道を歩いている人達の速度にはまだついていけなくて、ぶつからないように胸部をかばいながら、ゆっくりゆっくり自宅に帰りました。


手術の体験談、ここでおしまい。
長々お付き合いいただきありがとうございました。
誰かの何かの参考になったり、暇つぶしの読み物になったりしていたら幸いです。

※ペーシングリードの抜管は、実際経験した方の中にも「あまり痛みをかんじなかった」という方もいます。

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