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ドラマのようにはいかないという話

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私は、病気の子が出てくる物語が好きです。
(病気の子という表現が不快でしたらすみません)
周りに同じような身体の知り合いが居なかったもっともっと若かりし頃は、同じような経験をし、同じような悩みを抱えている同年代の子は物語の中にしか存在しませんでした。登場人物の一挙手一投足に自分を重ねて共感したり、周りの人間からはこう見えているのかもしれないと疑似客観視(そんな言葉はないけど)したり、もちろんただ物語としても楽しいし、世の中には自分の知らない色々な病が存在するのだと勉強にもなる。

ただ、ずーーっと気になっていたことが1つだけありまして。


『病を患っているヒロインはなぜ絶世の美女なのか』


ということ。


ドラマや映画は、演じているのが女優さんばかりなので、みんな美しくて当然なんですが
病を背負ったヒロインは、中でもとびきり美人のような描き方をされている気がします。

小説でもアニメでも、先天性疾患を持っているのはクラスで(もしくは学年で)1番の美少女と決まっていて、患者本人が語り部となって書かれているもの以外、まず前置きとしてその人がどのくらい美人であるかという描写があります。

なんでなんだろうか。
まぁ、なんか、美人でクラスの人気者の子が秘密を抱えているほうが、分かりやすくドラマチックだからかな。

そういえばドラマでも映画でも、患者役の人たちみんなするーんとさらーっとしてるけど、実際はもっとなんか色々管が刺さっています。見たところ術後でも首に点滴が無いし、ポータブルの心電図ついてないけどいいんですかと心配になっちゃう。とにかくみんな圧倒的に体に管が足りない。痣とかもできてるはず。手術してもしなくても。
あっさりとした酸素マスクだけつけて、病室で「今夜がヤマです」みたいな状態はまずないし。
あと髪とかもっとぼさぼさ。ずっと寝てた(横になってた)はずなのに、寝ぐせのひとつもついていないなんていったいどこのトリートメントを使っているんですか。
リアリティを追求しまくったら、医療従事者の持つPHSや各部屋のナースコールは鳴り続け、ひとりで病室を賑やかに出来る能力を持ったおばさまや、幼児返りかのように駄々をこねるおじさまだらけですよ。 入院生活が静かで穏やかなものだと思ったら大間違い。



さて、話を戻しますが

ちなみに私がイメージする、先天性の心臓病の子はね

まず色が白くて華奢。
窓から入ってくる風でカーテンが揺れ、艶のある黒髪が長くたなびき、パジャマの肩にカーディガンをちょいとかけ(こなれ感)、文字の小さい難しそうな本読んでそう。
そして気が強い。あと授業に出られていないのに誰よりも頭いい。

いろんな作品のいろんな女の子が混ざってるんですけどね。だいたいこんなイメージ。



なりたい。

もう心臓病の症状の一つに、華奢で美人というのを組み込んでくれないだろうか神様。




あとは、ストーリー的によきところで死ぬ。
もしくは何か魔法の力で治る。


この「魔法の力で」というのは、ある意味リアルだなぁと思います。
先天性の疾患は、ほとんどの場合が完治することが不可能。だから治すっていうのは魔法くらいしか方法が無いから。



知っている方もいるかと思いますが、先天性の心疾患のヒロインが登場する〘半分の月がのぼる夜〙という作品があります。ヒロインは先天性の心臓弁膜症。(他にも急性の拡張型心筋症の女性も物語には登場します)
もともとライトノベルで、アニメになったりドラマになったり、実写で映画化もされてますが、私はアニメで知りました。
アニメらしいというか、もちろん現実と違うことは多々ありますが、ヒロインは最後まで死なないし、魔法の力も出てきません。
アニメの最終回でヒロインが自分の残された時間について

『そんなに長くないよ。でも、そんなに短くもないよ。』

と言います。これはシンプルで、良い台詞だと思いました。その通りだから。
(またこの後の、男の子の返事も私は「なるほど」という感じだったのですが、全て書いてしまうと面白くないからここで止めますね)
私たちが長くないかどうかはよく分からないけど、でもどうやらドラマみたいにそんなに短いわけでもなさそうなんです。現に私は30歳を過ぎましたが、日本人女性の平均寿命までは生きられないと思うとはっきり言ってくれる医者も居れば、いやいや(心臓以外の死因なら知らんけど)平均寿命くらいは生きられるはずだと言う医者も居ます。

先のことがよくわかってないから、特別悪くて死んでしまうか、魔法でパリッと治してしまうかしか、物語にし辛いのかもしれないなぁ。




私は生まれつき心臓病で…というカミングアウトをすると、ほとんどの場合

「えー!全然見えないね!」

という言葉が返ってきます。
そして続けざまに、そんなに顔色良いのに。とか、元気そうなのに。とか。


いままでに1人だけ『見た目で全然分からないから苦労するでしょ。苦労っていうか、大変な思いしてても気付かれないもんね。』って言ってくれた人も居たけど、だいたいは「でもさ、(病人ぽくないから)そんなに重いわけじゃないんでしょ?」と続きます。

分からないけどね、どこからが重い病気なのか。
こんな文章が書けたり、立ち仕事をしていたり、親元を離れて生活していたり、医療的ケアの必要が無かったり、余命宣告されてなかったりするのは、実際のところ軽い病気に分類してもらえるのかもしれない。


でも、病人に見えないようにしてるんですよ。
定期的にきちんと病院に行って、中の写真撮ったり血抜いたりして毎日薬も飲んで、食べるものにも気を使ってる。どれかをサボればあっという間に心不全でぶくぶくに浮腫むか、貧血か、不整脈で心臓が大暴れして立っていられないと思う。
全部みんなもやってること(同じような身体のみんなね)だし、習慣になるくらい当たり前のことだけど、あえてはっきり言う。みんな、努力してるから病人に見えないのです。

学生の時から、そこそこ勉強したのに「全然勉強してなーい」というタイプの人間がいるけど、そういうの上手くできなくて、だから私は厚かましくも
『(病気に見えないように)頑張ってるからでしょうね。』と答えています。



もしも魔法の力が使えたとしても、いま「心臓を治してください」とは願わない気がする。

そもそも前の記事で『もしもの世界なんてない』って書いたばっかりだし。

もう今更急に新品の心臓になっても、嬉しくて走り回って転ぶとか、傷が無いから急に露出が増えて風邪ひくとか、とても持て余しそう。だから今世はとりあえず、このままでいいです。
その代わり、華奢な美人にしてほしい。



それは己で努力します。

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