スポンサーリンク

手術前の前兆と術後の変化について

Twitter
スポンサーリンク

ご存じの方も多いと思いますが、私は先天性心疾患(生まれつきの心臓病)で幼い頃に手術をし、ちょうど30歳になった年に、心臓弁を交換するために再手術をしました。
心臓疾患にも様々な種類がありますが、産まれたままでは生きられないので幼少期に手術をして、その後成人してから再手術(寿命を延ばすため)をするケースが少なくありません。

心臓疾患を持って生まれた子供が「大人になるのが当たり前」ではなかった時代が長いので、成人後の再手術の症例がまだまだ少ないらしく、Twitterなどでしばしば

・(うちの子供も)将来的に手術が必要と言われているけど、具体的にいつかってわからないものなんですか?
・手術の前に何か前兆(自覚症状)はありましたか?
・手術前と後で、何かはっきりした違いはあるんですか?

という質問をされることがあります。
先日、Twitterのスペース機能を使って、私の答えられる範囲のことをお話しさせていただく機会があり、今回はそこで話したことをまとめた記事を書きました。


繰り返しになりますが、私には専門的な医学の知識はありません。心臓疾患の当事者として実際に経験したことや、感じたことを書いています。
この情報だけを鵜吞みにせず、
気になることがあればきちんとご自分で調べたり、かかりつけのお医者さんに訊ねたりしてください。

それでは本題に入ります。


手術をする前に何か前兆(自覚症状)があったのか?と問われると
「ありました」
だけど、それはいつごろから?と問われると
「わかりません」
なんです。


一体どういうことなのか、これから話していきたいと思います。
(これまでにブログやツイートで書いてきたことの寄せ集めになると思います)


24歳か25歳のある日、それまでに経験したことのない明らかに異常な動悸を感じました。
緊張しているドキドキではない。じっとしているのに、まるで走った後のように心臓だけが跳ねている。そしていつまで経っても治まる気配がない。
痛くも苦しくもないけど(それも不思議でした)さすがに不安になってきて、仕事が終わって勤務先から帰る早朝、救急車で病院に行きました。
(まだ勤務先周辺の時間外で診療している病院が分からず、電話で問い合わせると「救急車を呼んでください」ということで、本人は意識もはっきりしているしタクシーなど自力で向かえる状態ではありました)

診察の結果は、持病が原因で起こった心房細動でした。

これをきっかけに今の主治医のいる病院にかかるようになります。

「この状態を不整脈と呼ぶ」ということを知らなかっただけで、不整脈が起きているなと自覚することはこれまでにも何度かありました。
それはなんていうかしゃっくりみたいなもので、ふとした時に突然始まり、気付くと治まっていました。痛みがあるわけでもなく、しゃっくりのように音(声)も出ません。
健康な方でも30代になればほとんどの方が経験すると聞いたことがあります(本人が気付かない場合がほとんど)

ですが今回、心臓そのものに負担がかかるような種類の不整脈が発生していたので、アブレーションという治療でそれを抑えましょうという話になりました。
生まれつきの心奇形に加え、手術で何か所かメスを入れていると、誤った電気回路が発生しやすくなってしまうのだそうです。
これについては過去の記事で詳しく書いています⇒【不整脈とカテーテルアブレーションの話


かつて手術をした地元の病院(小児科)からカルテや手術記録を取り寄せ(普通は30年近く前の記録が残っているだけでもすごいと言われました)、アブレーションをした大学病院で引き続き今後の治療を任せることが決まりました。
(私の心臓はややこしいらしく、誰でも診られるものではないのだそうです。先天性の人はみんなそうかな。)
そこで、小さいときに手術で形成した心臓弁にも寿命があり、いずれ新しいものに取り換える必要があるという話をされました。とりあえず発作的に起きる大きな不整脈さえ抑えてしまえば心負担は減り、心不全は改善されるはずなのでまだしばらくはこれまで通りの生活ができるはず。と言われ、それまでの間にゆっくり医療行為に対するPTSDの治療(こちらも完治はない) と、この先必要になる弁置換手術の準備をしていくつもりでした。

ところが、アブレーション成功後
状況が改善されるどころか、心不全の症状がどんどん顕著に現れるようになってきました。
不整脈が原因で心臓の負担が増えて心不全が起きていたわけではなく、心臓そのものが弱って不整脈を起こしていたんです。
今回のような不整脈が起きていなければ、私はきっとまだしばらく病院に行くことは無く
医師からは「取り返しのつかないことになっていただろう。心臓からのSOSだったんだ。」と言われました。

日常生活の中で感じる心不全の症状として具体的にどんなことがあったかと言うと
去年は何も気にせず着ていたコートがやたらと重たい。それと同じで、荷物も重たく感じるので鞄の中身が減っていく。(減らさざるを得ない)
友人の歩く速さに合わせられない。(そのうち追いつけなくなっていきます)
これまで駅から徒歩10分だった距離が15分近くかかっていることに気づく。
利尿剤を飲んでも思うように浮腫みがひかない。 などなど。

医師からは「今すぐ命に関わる状態でないというのは変わらないけど、我々(病院側)が思っている以上に、あなたの心臓はもう余力がないのかもしれない。できるだけ早く手術をした方がいいかもしれません。」と言われます。


そこで私は悩みました。全力を尽くして悩みました。
病院側もいろんなことを話し合ってくれていたようです。
このあたりの詳しい話はこちら⇒【手術をしますか?しませんか?

きっと皆さんが気になるのは、前述した「心臓そのものが弱っていたこと」には自分で気付けなかったのか?ということだと思うのですが、残念ながら私は気付けませんでした。
いま振り返ってみて「あの時病院に行っていれば…」というタイミングが全くなかったと言えば嘘かもしれません。いや、でもやっぱり当時に戻れたとしても私は「ちょっと疲れがたまっているのかな」程度で軽くとらえて病院には行かなかったと思います。


これを私はよく体重に例えるのですが、例えば50㎏の人が50.3kgになったとして、よほど体重をコントロールしているアスリートのような人でない限り、体重計に乗らずに「今日はいつもより300g重くなったな」なんて気付けないですよね。
同じように49.7kgになったところで「痩せたな」とも感じないと思います。
2~3日したら50.3kgの体に慣れて、50.5kgになっていても気付かないでしょう。そこから51kgになって52kgになって「もしかして少し太ったかも」と気付いて体重計に乗ったところで、その数字が特別異常なことだとは思いませんよね。
「便秘だからかな」「飲み会続きだったから」「昨夜味の濃いもの食べたからむくんでるのかも」「来週は炭水化物を控えたら戻るだろう」なんて言い訳に近い理由をこじつけます。

実際に若い頃は少し食事を減らせば1kgくらい簡単に落ちるし、水分摂ってトイレに通えばむくみも便秘も解消されました。だから今回もきっとそうだろうと思っているうちに数日が経ち

そして52kgが当たり前になると、そこから52.5kgになって53kgになってもまた同じように
「便秘だから」「むくんでるのかも」「来週は夕飯を抜いて…」と考え、年齢とともに代謝は落ちる。という言い訳も相まって、そろそろダイエットしないとなと言いながらもあれよあれよという間に60kgが見えてきますよね。
(体重が増えなくて悩んでる方にはいまいちピンとこないかも。ごめんなさいね。)



私は慢性心不全なので、いつもちょっとだけ無理をして社会生活を行っていました。
(重ねて言いますが「私の場合」ですよ。)

ちょっと体がだるくても、週末休めば治るかなと思ってそのまんま仕事に行ったし
少し浮腫んでも、しばらく塩分やアルコールを控えたら抜けるだろうと思っていたし
胸が気持ち悪い感じがしても、特別苦しいわけではないからそのうち治まるだろうと思った。

それで、実際数日で何とかなったり、何ともならなかったけどその状態の体に慣れてしまったりして、それは心臓の経年劣化でもあるので突発的な検査では異常が現れなかったりして、自分にも、周りの人間にも気付かれないくらいじわりじわりと心不全が悪化していました。



医師の言う通り、もしも心房細動の発作が起きていなければ、同じ手術を受けるにせよ自分で救急車を呼べる状態でないくらい悪化させていたのかもしれません。

術後の状態は、残念ながら完璧ではありませんでした。
一般的に心臓手術の影響でしばらく不整脈が現れることがありますが、私はそれが残ってしまいました。その不整脈はアブレーションで焼き消せるものではなくて、投薬で抑えるしかないので、心臓の働きを助ける薬と血栓予防の抗血液凝固剤はこの先も飲み続けないといけません。
(状態が完璧であれば、術後から一定期間を過ぎると投薬量は減っていくものですが、私は術後より増えています)

体質が変わってPMS(月経前症候群)に悩まされるようになったかと思えば、毛が抜けたり太ったり声が低くなったり、改めて書き出してみると散々ですね。

それでも体力に関してはやっと少しずつ取り戻してきて、手術直前と比べると「元気になった」と感じることが増えてきました。
術後の入院中はなかなか厳しい状態(『手術で改善されたこと』よりも『侵襲によって低下したこと』が多かったから )も経験しているので、生活の制限がありながらも投薬程度でやっていけるなら十分だと思っています。


術後の記録もいくつか過去に記事にしていますので、ご興味ある方は【体験談】のカテゴリーから探してみてください。


手術前にも沢山の検査をして、いろんな先生に診てもらったのですが、実際に開胸したら、どの医師が想像していたよりもひどい状態だったそうで「正直な話、もう少し早い段階で手術適応であると判断して弁置換していたらよかったと思う。少し遅かった。」という話もされました。
その「少し」が1~2年の話ならきっと悔しかったでしょうが
「4年とか5年、もっと前でもよかったのかも」
その頃に手術の話をされても私はきっと怖がって先延ばしにして、逃げていたと思います。

自覚症状もないのに、わざわざ開胸手術に挑むような知識も度胸もありません。

手術をしないからと言って今すぐ命に関わるわけではないし、手術をしたからと言って心臓を正常な状態に戻せるわけではない。早すぎてもダメで、遅すぎてもダメで、今自分がどの段階なのか、開胸してみるまで分からない。 だからタイミングが難しい。
4~5年前、私の心臓の状態を手術適応だと診断する先生は、私の行ったいくつかの病院に限ってはまだいなかったんです。

これはたらればの話で私の想像でしかないのですが、幼いころから同じ病院に定期的に通院してデータを見てもらっていれば、本人に自覚症状が現れる前に心機能の低下に気付いてくれる医師がいたかもしれません。
これから先、新しい検査の方法が発見されて、もっと詳細に再手術の基準が設けられるかもしれません。「(胸骨を)開いてみるまで分からない」という言葉が、古臭い表現と言われる時代が来ると思っています。
そうなってほしいと思っています。できるなら私の生きているうちに。


最後の最後でこんな誰の参考にもならないことを言いますが、個人的には手術を受ける前と後で、もっと生きたいと思うようになったことが1番の変化です。

どんなに医療が発展しても、その医療を受けるのは私たちの体です。
まずは病院に行くこと。
そしていつかの時のために、おいしく食事をしてたっぷり睡眠をとって、生きていることが楽しいと感じていることしか前もって自分に準備できることは無いなと思っています。





つくづく個人的な話ばかりなので、何の参考にもならなかったと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございました。




おしまい

コメント

タイトルとURLをコピーしました