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QOLの向上について少し考える

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今回は自分の仕事や生活の質について考えたお話。


※これは私の現在の身体に限った話だから、皆さんは各々の担当医と相談して正しい指導を受けてね。 いつも通り「こんな人も居るんだな」という気持ちでさらりと読んでください。


退院してから3カ月経ちました。不整脈が残ってしまったり声帯が腫れていたり、お手本通りとはいかないけどまずまず回復しています。
心臓の手術後というのは厳しい水分と塩分の制限を強いられるのですが、私は退院してからもずっと、入院中と同量の制限が残っていました。塩分1日6gまで。水分は1日1.5ℓまで。
まず塩分を1g摂取すると100gの水が必要(体内に留まる)になります。体内の塩分濃度が上がればその分体内に水分を取り込んでしまうことになって、体内の水分量が増加すると心臓の働きに負担がかかって心不全を起こしてしまう可能性があるので、塩分は最小限に留めましょう。ということなんですけど。(他にも血圧とか腎機能とか様々に影響するけど私にとって一番重要なのが浮腫むか否かなので、今は割愛)
ちなみに⇩

厚生労働省が2014年3月に発表した「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書によれば、18歳以上の男性は1日当たり8.0グラム未満、18歳以上の女性は1日当たり7.0グラム未満という目標量が定められています。 (2014/10/19 )

https://www.midtown-amc.jp/faq/faq_others/qol.html

1日6gって、なんだったら厚労省が言う7gだって、普通に外食したら平気で超えちゃう。実際の平均摂取量(成人女性)は9.1gらしいし。 ※平成29年度国民健康・栄養調査(20歳以上)


どうしても制限が必要ならこれからも出掛ける際は外食をしないようお弁当を持参するとか、自炊がしんどかったら減塩食の宅配弁当を頼むとか、塩かダメなら砂糖でお腹を満たすとか(あかんけど)、どうにでもやりようはあるんだけど、体が動かせるようになってくると友達と外食もしたいし、デリバリーのピザも食べたい…。それで、改めてこの制限は一生付き合っていくものなのか、病院の先生に聞いてみました。

「君の場合、正直6gが7になっても8になっても、すぐ心臓に影響が出るような状態ではない。もちろん減塩は気にしてもらわなきゃいけないけど、外食出来ないとか、買ったもの食べちゃいけない(塩分表記の無いお惣菜類)とか、これから復職するうえで仕事しながらだと難しいよね。もしも浮腫んでしまった場合は利尿剤を増量して水分抜けばいいんだけど、利尿剤増えたら腎臓に負担になって将来的に腎臓がだめになってしまう可能性が出てくるから増やしたくないんだ。だけどね、今が楽しく暮らせないなら何十年か先のことなんか考えられないでしょ。
と言って、ちょっと制限緩めてみて数値を見てみよう。ということにしてくれました。
その結果浮腫みや血圧に明らかな変化があったら、塩分6g以下生活は続行。(現在はまだお試し期間中)

緊急事態宣言のおかげで今も外食はせず、しこしこ自炊生活なんですが、電卓と栄養成分票を片手に料理していた(やると決めたら制限は完璧に守るタイプ)時に比べて、目分量で調味料を入れられたり、使える素材が増えたので圧倒的に料理も楽しい



私の担当をしてくれている循環器内科医は、特にQOLについて重視してくれている印象を受けます。それは、患者想いで非常に物分かりの良い先生ということだけでなく、先生本人が先天性心疾患を持っていることが大きく関係していると思います。
先生も、医者という仕事がすごく好きそうで、だけど心臓のことを考えたらきっと優しい仕事ではない。心臓が原因で(能力はあるのに)仕事上出来なくなったことが沢山あるそうです。体のせいで諦めなければいけない悔しさを、私以上に味わい続けているんだと思う。
どうしても限界はあるけど、病気のせいで何かを諦めることを減らしてあげたい。とよく言います。

QOL…Quality Of Lifeクオリティーオブライフ
社会的に見た生活の質や、人生の内容(人生に幸福・生きがいを見出しているか)を表します。
患者の身体的な苦痛の軽減、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度という意味が含まれ、医療用語として、がんの治療などの際に耳にすることが多いかもしれません。

治療効果が高いけれど、副作用も大きい治療を選ぶか、治療効果はあまり高くなくても、副作用が少なく体に優しい治療を選ぶかといったときにも患者様のQOLは重視されます。

https://www.midtown-amc.jp/faq/faq_others/qol.html



初めて手術をした時は、赤ちゃんなんだからこちらの感情(親も含めて)がどうとか四の五の言ってる場合じゃない。手術するか死ぬかの2択。なんだったら手術したって死ぬかもしれなかったんだから、とにかく命を救うことが最優先でした。

だけどなんとか大人になると、心臓そのものを新品に出来るわけでもなければ、そんなにすぐ死んじゃうわけでもない。ある程度社会生活もこなせるようになっていたりします。
そんな状況で私たちが日々受けている医療行為は、完治させる為に行うわけではないので、塩梅が非常に難しい。 患者本人の意思や人生設計が重要になってきます。
単純に心臓の負担になることを片っ端から禁止して、長く生きることだけを目的とするならば、人生はとても退屈で、私は溶けてしまっていたかもしれません。(当たり前だけど比喩だよ)

もちろん、直ちに体に悪影響が出るとか、命の危険があるようなことはNGですが
多少リスクがあるのを了解した上で(その可能性があっても)やった方が後悔しない(幸福度・満足度が増す)ならやってみよう」 という。今の自分にとってのQOLを向上させることというのは、こういうことだと考えています。


私は手術前まで、カウンターの中に立ってお酒を提供する仕事をしていました。
昼夜が逆転している生活だったり立ち仕事だったり、心臓に良くない(と言われる)ことばかりなので、私のカルテを見て(現在の職業が書いてあるので)素直に怪訝な顔をする医師も沢山居ました。やってみたいけど、どうせずっと続けられる仕事じゃない。いつか出来なくなるから、興味がある世界を少しでも経験できた方が後々諦めがつく。と思って飛びこんだら、お店を変えつつ7年近く続けられて私本人も驚いています。



お世話になっている担当医と執刀医は、好きな仕事をすることを重要視してくれます。

身体に負担の少ない仕事に就くことはもちろん大事なことですが、その仕事にやり甲斐を感じられるかが大切で、その仕事が好きで、またその職場に戻りたいという気持ちがあるかどうかは治療を続けるモチベーションを保つためにはとても重要だと言います。そしてそれと同じくらい、体のことを理解してくれる職場環境であることも大事です。
悲しいかな 大人になっても、病気や障害を理由に意地悪する人はいます。予想できないタイミングで心臓が言うことを聞いてくれないことだってあるのに、融通が全く利かない職場では治療のタイミングがずれてしまうかもしれません。入院のたびに離職したり、もう治っているのに診断書を要求して休職を延ばそうとする人も実際に居て、病院側としては良い環境で好きな仕事が出来ているなら、可能な限りその生活を維持できるようなサポートがしたい。と言ってくれました。




開胸してみたら病院側の想像していた以上に心臓の状態が悪く、術後いろんな先生から「あんな状態でよく仕事が出来ていたね」と言われました。
まだICUにいた頃、執刀医が様子を見に来てくれて、仕事に戻りたいかと聞かれたことがあります。私はいよいよドクターストップが出るのかなと覚悟して「(仕事に)戻る自信はないです」と答えました。すると先生は

「僕は出張が続いて現場に立てない時は、飛行機の中とかね、移動中も頭の中で手術のイメージをして感覚が鈍らないようにするんですよ。えふさんも体はまだ動かせないけど、頭の中でお酒を作るとかね、イメトレすればいいんだよ。」

そして先生のお気に入りのバーの話をいくつかしてくれました。この病院の先生達にも教えてない隠れ家だそう。それから好きなウイスキーの話も。
「アイラモルトがお好きなんですねー」なんて相槌打てただけでも自分を褒めたい。
こっちはまだ呼吸器抜けたて、全身管だらけですよ。水も飲めないのに高級なアルコールの話をすると思わなかった。あまりにもシュール。
「(私は仕事に)復帰できるんですか?」と聞いたら「当たり前じゃない!心臓(弁)はちゃんと治したからね!」と笑ってくれた。
「仕事に復帰したら、僕飲みに行きますよ。」とまで言ってくれたけど、来ないでくださいとお断りしました。私に貴方を接客する度胸はない。


そうは言うものの実際は全然当たり前じゃなくて、「いつか出来なくなるけど、それまではやらせてあげたい」ってことなんだけど。


退院してしばらくは、真剣に転職を考えていました。担当医に相談すると

「いまは身体も不安定だから不安一杯で当然なんだけど、もしいま元気だったらまた同じ仕事に戻ってるでしょ。体力戻るまではもう少しかかるけど、ちゃんと戻るから。バーテン続けられるように手術させたんだから。」

自分の体がだめになるまでは医療界に居続けると決めてる担当医は、ストップどころかゴーばっかり出す。さすがだ。


「貴方は僕と同じような感覚の人だと思うから、これは医者じゃなく同じ先天性の人間の意見だと思ってね。」

はい。

「少しくらい寿命が縮んでも、やりたいことさせてくれって思わない?」

うん。思います。


「 僕も本当は心臓マッサージとか、しちゃいけないけど、やっちゃう。」

それは仕事としては絶対やった方が良いから、相槌打ちにくいです。

正直なんで仕事の話してるのに、いちいち「寿命」なんていう大袈裟なワードが出るんだろうかとうんざりする気持ちもあるにはある。


それでもやっぱり、カウンターの中は楽しくて
こんな体の奴がする仕事じゃないと言われるほど、やってやりたくなってしまう。
仕事の内容もそうだけど、周りのスタッフ(同僚と言うの?)とまた一緒に働きたいんです。私の人生観ががらりと変わるくらい刺激的な環境だった。これはまた別の機会に話すけど。
だから今はこつこつ筋肉をつけて、声帯の腫れがひくことと、感染症に怯えなくてもいい日常が戻ってくることを願っています。


生き甲斐があって毎日が楽しくなると、もっと楽しいことがしたくて長生きしたくなってしまう切なさもありますね。
それでもついうっかり30代に突入したみたいに、臆することなくQOLは向上させ続けて、このままうっかり40代を迎えたいと思っています。
こんなに生きるつもりじゃなかったんだけど!とか言ってしわくちゃでお酒飲みたい。


今日はここまで。

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