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★親切心から逃げる

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幼稚園に入って、家と病院以外の世界を知ります。
私が通ったのは、普通の幼稚園。
小児病棟入院中にはすぐ友達ができたけど、初めて同い年の、普通の(健康な)子供たちと触れ合うことになります。

まだ自分の病気についてよく知らない。でも自分がみんなと違うことはわかる。
運動しちゃいけないことは知ってるけど、それをどうやって自分の言葉で説明したらいいか分からない。
先生方もいろいろな配慮をしてくれて、楽しかったけど、戸惑いの多い毎日だった。

幼稚園ぐらいの時って「かけっこが早い子はモテる」の現象ありませんでした?
その反対に、みんなが運動場で走り回っているのを、じっと座って見学していなければいけない私は、だんだんとどうやって友達を作るのかすら分からなくなっていきました。

ある日、登園するとみんなが優しかったんです。
いつもは遊ぼうなんて声かけてくれない子が、遊ぼうって誘ってくれたり、話したことないような子が話しかけてくれたり。
わけが分からなかったけど、なんだかとっても嬉しかった。
「疲れてない?えふちゃんは休憩しながらでいいからね。」
なんでわかるんだろう。優しいな。おとなのひとみたいなこと言ってくれるな。
ずっと一緒に遊びたかったけど、なんて話しかけたらいいか分からなかったの。
よかった。今日からみんなと友達になれるかもしれない。嬉しい。
その時ぽろっと、誰かが言いました。
「えふちゃんは、病気があるから、優しくしてあげなきゃいけないんだもん。」


あぁ…。そういうことか。


その日、私はホルター心電図をつけたまま登園していました。
必要以上に「それなあに?」って聞いたりコードを引っ張ったりしないように、こどもたちのわかる言葉で、私のいないところで先生からみんなに『だいじなおはなし』があった。

私はすごい速さで全てを察した。
そしてものすごい速さでひねくれた。


あぁ、なんだ。
私と遊びたいと思ってくれたわけじゃないんだ。
仲良くなろうとして話しかけてくれたわけじゃないんだ。
「病気の子には親切にしきゃいけない」って先生に言われたから、優しくしてくれただけだったんだ。

みんなの親切心は、私ではなく病気の子に向いているんだと思った。

次の日からは、遊ぼうって誘われても自分から断るようになった。
誰からも優しくされないように、図書室に隠れたりもした。
ひとりで絵本を読んでいるほうが、わけも分からず優しくされるよりさみしくなかったから。

今考えると、先生に言われたことをそのまま実行するなんてなんて素直でいい子たちだったんだろうか。とも思えるけど
その時の私からは、みんなと遊んでみたい気持ちがするする抜けていった。
変わりにその抜けたところには、少しずつ人を疑う気持ちが詰まっていきます。

なんでこんなに親切にしてくれるんだろう。
誰かに私が病気だって聞いたのかな。
胸の傷が見えちゃったのかな。
そんなことを考えなくていいように、大人になってから何年も、自分の病気のことを隠しながら生活していました。


誰のことも、自分の身体のことも、全く恨んでないけど
今でもこびりついている、昔の思い出でした。



ホルター心電図…ホルター博士が作った、24時間装着したままの心電図。装着したまま通常の生活をしてもいいって言われるけど、邪魔だよ。

携帯型心電計を用いて日常生活中の心電図を、長時間に渡って連続記録して、診断や治療に役立たせようとするものです。

https://www.furano.ne.jp/utsumi/sisetu/holter.html

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